生産的に働くことについて考える / 『管理ゼロで成果はあがる〜「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』を読んで①

ふとFacebookのタイムラインから流れてきた「管理ゼロで成果はあがる〜「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう」という本。今まで技術書ばかり読んできていて組織や人に関する本には手をつけていなかったのですが、最近は積極的に読むようにしています。この本を読みながら改めて気付かされる点が非常に多かったため、自分のためにも書評を書きます!

目次

以下が目次となっていて、この記事では太文字の「第1部 生産的に働く ~楽に成果をあげるために“見直す”」に注目します。

  • はじめに
  • 第1部 生産的に働く ~楽に成果をあげるために“見直す”
    • やり方を見直す ~「ふりかえり」で抜本的に生産性を改善する
    • 生産性を見直す ~「時間対効果」の高い仕事をする
    • タスクを見直す ~「タスクばらし」で小口化する
    • やる気を見直す ~無理に上げない、なくさない状況をつくる
    • 信頼関係を見直す ~「心理的安全性」を生み出す環境
    • 会議を見直す ~口を動かすだけでなく、いっしょに手を動かす
    • 雑談を見直す ~ホウレンソウから「ザッソウ」へ
    • 社内業務を見直す ~人手に頼らない「業務ハック」で改善を続ける
    • 価値を見直す ~受託脳よりも提案脳で考える
  • 第2部 自律的に働く ~人を支配しているものを“なくす”
    • 管理をなくす ~セルフマネジメントで働くチームをつくる
    • 階層をなくす ~「ホラクラシー」組織を実現する仕組み
    • 評価をなくす ~個人の成長と会社の貢献の「すりあわせ」をする
    • 数字をなくす ~組織のビジョンよりも自分のためならがんばれる
    • 組織の壁をなくす ~信頼しあえる企業文化の育て方
    • 急募をなくす ~仕事があっても、いい人がいなければ採用しない
    • 教育をなくす ~自分の頭で考える社員の育て方
    • 制度をなくす ~本質ありきで考える「そもそも思考」
    • 通勤をなくす ~働く場所に縛られない「リモートチーム」
  • 第3部 独創的に働く ~常識や慣習に従うことを“やめる”
    • 既存のビジネスモデルに従うのをやめる ~納品のない受託開発
    • 顧客を説得する営業をやめる ~対等な関係を作るマーケティング
    • 新規事業の指示命令をやめる ~部活から生まれるイノベーション
    • 規模を追求することをやめる ~組織の大きさもコントロールしない
    • 会社らしくすることをやめる ~文化をつないでいくコミュニティ
  • おわりに

「精神論」でふりかえりをしてはいけない

「やり方を見直す」方法として「ふりかえり」の大切さが述べられています。

ふりかえりの4つのポイント

  1. KPT(Keep・Problem・Try)でふりかえりをする
  2. とにかく全員で出し切ることを優先する
  3. 精神論ではなく、具体的なアクションに落とし込む
  4. 週に一度、1時間のふりかえりから始める

特に3番目は多くの人が陥る問題だと思います。何か問題(Problem)があって、それを改善するための試み(Try)を考えた場合、どうしても「次はこうならないように気をつける」と精神論を言ってしまいがちです。

そういった精神論ではなく、以下のように具体的なアクションに落とし込むことが大事だと述べられています。

Problem「2日連続で寝坊してしまった」
↓
【NG】Try「早起きするように気をつける」
【OK】Try「目覚まし時計を買う」

僕もついつい「がんばる」や「気をつける」と言ってしまいがちですが、常にこの点は意識していきたいです。

100%の品質と完成度は目指さない

80%の完成度には2割の時間でよくて、残り20%を高めるためには8割の時間がかかる

というパレートの法則の引用を用いて、完璧を目指してはいけないという点が紹介されています。

ja.wikipedia.org

完璧を目指そうとすると考え込むことが多くなり、ひたすら時間だけが過ぎていくことが多くなります。また、そもそも完璧の定義自体が自分で決めたものなので、完璧かどうかなんてわかりません。

80%であってもリリースをしてみて、「もっとこうしてほしい」点や「これは必要ない」点について早い段階で見つけて改善していくことが大事だと述べられています。

最後にFacebook創業者のマーク・ザッカーバーグの引用も紹介されています。

Done is better than perfect.

この考え方は最近読んだ「エンジニアの心を整える技術」でも紹介されていて、非常に大事だと感じています。

booth.pm

作業じゃなくて仕事をまかせる

本書では「仕事」と「作業」は違うものだと述べられています。

  • 作業
    • 事前に定められた手続きに従っておこなう活動
    • 手を動かすことに価値がある
    • わかりやすい結果や指標がある
    • 進め方に創意工夫の余地がない
  • 仕事
    • だれかに価値を届けるための活動
    • 「価値とは何か」をそもそも考えなければいけない
    • わかりやすい結果や指標がない
    • 進め方に創意工夫の余地がある

作業の進め方に「創意工夫の余地がない」かどうかは議論の余地がありそうですが、僕自身も作業を依頼していることが今まで多かったかなと感じます。

作業には事前に定められた手続きが必要になるので、依頼する側の負担が大きいです。さらに、「依頼」をされると、された側は自分の仕事として考えるのが難しいと本書では述べられています。

仕事には「わかりやすい結果や指標がない」かわりに「進め方に創意工夫の余地がある」ことで、仕事をする側は 主体性をもって取り組む ことができます。

主体性をもつ→自律的に成長する→モチベーションが上がる→生産性も上がる

というような好循環が生まれる。上の表現だけでは単純に見えますが実際には「仕事の全体像や目的の伝え方」、「コミュニケーションの方法」、「フィードバック」について気をつけるべき点があり、本書では別途詳しく紹介されています。

社会人になって2、3年もすれば後輩ができたり、チームメンバーの入れ替えなどがあってコラボレーションを主体的に行っていく必要性が増していきます。そのときには作業ではなく、仕事をまかせることが大事なんだと改めて考えさせられました。

「ホウ・レン・ソウ」から「ザッ・ソウ」

本書ではホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)の大切さについて述べられつつも、より大事なのはザッ(雑談)・ソウ(相談)だと述べられています。「雑談が大事」なのは既に知っている人も多いと思いますが、問題はどうやったら雑談を増やせるか?という点です。雑談は「よし、雑談をしよう!」と言ってなかなかできるものでは無いですし、信頼関係など前提条件が揃っている必要があります。

そこで本書では「雑談をうまくするポイント」が3つ紹介されています。

  1. 雑談と仕事の場所をツールで分けない
  2. 社内で起きている雑談の様子を見える化する
  3. 定期的に雑談する機会をつくる

雑談と仕事の場所をツールで分けない

この点についてはハッとさせられました。確かに、例えばSlackのチャンネルに「#雑談」というチャンネルがあったとしたら、そのチャンネルに投稿するということは「よし、今から雑談するぞ!」という気持ちが先に発生する人が多いと思います。もちろん人によってこれは変わるのでしょうけど、雑談をする前に「雑談 or NOT 雑談?」というオーバーヘッドが生まれるのがあまり良くないというのには納得させれました。流れるように自然に雑談ができる環境がベストですよね。

社内で起きている雑談の様子を見える化する

この点については前提として社内全体の高い信頼関係が必要だとは感じます。それが無い状態ではどうしても前節にも述べられているように、発言の前に「こんな内容(雑談)を投稿していいだろうか?」というマインドが発生してしまうからです。

また、もう一つ注意する点については、(これは雑談に限った話ではないですが)公開される情報が多くなるということはSlackのようなツールの場合にそれだけ「通知」も多くなります。これによって気になることが多くなり、生産性が落ちてしまう可能性も含まれていると思います。

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気になる通知

そこで僕が追加で紹介したいのはポモドーロ・テクニックです。

「25分間はとにかく決めたタスクに集中し、5分間休憩を挟む」ということを1セットとして繰り返すテクニックのことです。この25分間の間、通知が来たとしても無視します。無視するというのは、Slackであれば「離席中」にして通知が来ないようにするレベルです。

この記事では詳しくは述べませんが、以下の記事がとてもよくまとまっているのでポモドーロ・テクニックに馴染みの無い人はぜひ読むことをお薦めします!

kakakakakku.hatenablog.com

話が少し逸れましたが、「雑談の見える化」は見ようと思えば誰でも見えるような状態にしておくことが一つのポイントなのかなと僕は解釈しています。これもSlackの例えになりますが、可能な限りチャンネルはすべてPublicにしておくことがその手法の一つかと考えています。「他のチームの様子はどんな感じだろ?」となったときに「チラッ」と覗けたり、チャンネルにJoinできたりする環境が大事だと思います。

この点についてはSlackのJulia Graceさんによる「Building Engineering Teams Under Pressure(英語)」という公演でも述べられていて、合わせて視聴することをお薦めします。

www.youtube.com

まとめ

「管理ゼロで成果はあがる〜「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう」の「第1部 生産的に働く ~楽に成果をあげるために“見直す”」を読みました!個人的には「ふりかえり」することと「雑談」することが2つの大きなポイントだと感じました。「生産的に働くこと」については常に意識しつつ今後も仕事に取り組んでいきたいと思います!

また、セルフマネジメントについては、以下の記事で書きました!

kenfdev.hateblo.jp

おまけ

生産的に働くこととDeveloper Happinessも強く関連していると思います。この点については以前書いた下の記事で「Developer HappinessとEmployee Retention」というトピックでも紹介していますので興味があればぜひ読んでみてください!

kenfdev.hateblo.jp